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イノベーションサイクル・アプローチ

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概要

前回の記事では、イノベーションに対する人々のイメージが異なるため、その定義について解説しました。特に重要なポイントとして、「想像しやすいこと」と「アクションに繋がること」が挙げられます。これに基づき、弊社ではイノベーションを「ある課題を解決することで人々の生活パターンが変化すること」と定義しました。今回は、この定義に基づいて、イノベーションサイクルやアプローチについて詳しく解説していきたいと思います。

  1. そもそもイノベーションとは? 
  2. イノベーションサイクル・アプローチ
  3. 結論と注意点 

2. イノベーションサイクル・アプローチ?

まずは、企業の存在意義から

AI編でも解説しましたが、まずは「そもそもうちはどんな会社だったか」という「会社の存在意義」に立ち返ることが重要です。イノベーションは上司から言われた作業を繰り返すことではなく、従業員自らがクリエイティブに考える必要があります。その際に必要なのは、会社から明確な方向性を示すことです。しかし、そもそも会社がなぜ存在しているのか、どんなサービスを追求しているのかがわからなければ、従業員は自ら動くことができません。

旅行に例えると、例えば「水曜日に休みを取って家族でゆっくりしたい」という場合、「方針」が明確です。この方針に基づいて、多くの人は温泉旅行や、夏なら海、冬ならスキーなどを考えるでしょう。しかし、方針がないと「旅行に行こう」と言うだけで、具体的に何をすれば良いか想像するのが難しくなります。

この話をすると、多くの方は「職場でそんなにふざけている人はいないよ」と言いますが、よく考えてみてください。本当にそうでしょうか。私の仕事は困っている会社にアドバイスを提供することですから、こうした課題を持つ企業と出会うことが多いのも事実です。しかし、ある知人によると、某会社でAI担当役員が全社ミーティングで会社の「方針」は「各部門でアイデアを集め、進め、それから一番うまくいったことを選び全社に拡大します」と言ったそうです。本当にこれで方針を示したことになるのでしょうか。私はかなり疑問を持っています。

次は環境作り

イノベーションを促進するためには、次に「環境作り」が重要です。社員が自由に新しいアイデアを出し、それを共有できる環境を整えることが必要です。会社の文化がイノベーションに大きな影響を与えるため、経営陣と社員が一体となって、創造性とエンゲージメントを高める環境を作り上げることが求められます。例えば、失敗を恐れずに挑戦できる雰囲気を作り、社員が安心して新しいことに取り組めるようにすることが大切です。

また、イノベーションが生まれやすい環境を作るためには、異なる視点やアイデアを尊重し、オープンなコミュニケーションを促進することが重要です。多様なバックグラウンドを持つ社員が集まり、自由に意見を交換できる場を設けることで、新しい発想が生まれやすくなります。さらに、社員が自分のアイデアを実現できるように、必要なリソースやサポートを提供することも欠かせません。

最後に、イノベーションを持続的に生み出すためには、経営陣が積極的に関与し、イノベーションを推進する姿勢を示すことが重要です。経営陣がリーダーシップを発揮し、社員に対してイノベーションの重要性を伝えることで、全社的な取り組みとしてイノベーションが根付く環境を作り上げることができます。こちらには、「言葉だけではなく」、トップエグゼクティブが明確な「目指すべき姿」を示したり、十分な予算を確保するなど、具体的にアクションをとることも重要でしょう。

具体的な進め方

具体的なアプローチはコンサルティングでよく使われる方法で良いかと思いますが、流れは以下の通りです。

  1. 目指すべき姿の定義
  2. 現状分析
  3. ギャップ分析
  4. 施策の洗い出し
  5. 施策の評価

ここでは詳細の説明は省きますが、目指すべき姿を定義することは非常に重要です。これは「企業の存在意義」に基づいて、お客様がどのような課題を抱えているのか、それを解決することでどのように生活パターンが変わるのかを想像する必要があります。

例えば、20〜30年前、Eコマースがまだ普及していなかった時期には、「お客様が実際に商品を見たり触ったりできないため、買い物に不安を感じる」という課題がありました。そこで目指すべき姿は、「お客様がオフラインの店舗で買い物をするように、不安を感じずにオンラインで買い物ができるようにすること」でした。これを解決することで、お客様は店舗に行かなくても24時間いつでも買い物ができるようになり、生活パターンが変わり、イノベーションに繋がると言えるでしょう。

うちは。。。会社の方針がないが。。。

よくあるパターンとして、前回解説したように、イノベーションと言っても定義や方針がないため、何も起こらないことがあります。結果的に、「イノベーションは綺麗な言葉に過ぎない」というイメージが従業員の間に広がります。これは解決が難しい問題ですが、ボトムアップでアプローチするしか方法がないと思います。ボトムアップのアプローチは時間がかかり、トップダウンでリードする方法よりも3〜10倍の時間と労力が必要です。この点にご注意ください。

アーリーアダプターを狙う

テクノロジーアダプションサイクルという言葉を聞いたことがあるかと思いますが、企業でも同様のサイクルが見られます。まず、アーリーアダプターを狙うことが重要です。アーリーアダプターはどの会社にも存在し、通常10〜30%の人々が変革を求める潜在的なアーリーアダプターです。逆に、ラガードと呼ばれる人々もどの会社にも存在し、こちらも10〜30%を占めます。この中で、最も変革を求めているアーリーアダプターをまずターゲットにします。アーリーアダプターで構成されたチーム(3〜5人)で成果を出すことが重要です。成果を出すことで、マジョリティと呼ばれる人々の間に「これ、本当にできるかも」という認識が広がり、変革に積極的に参加したい人が増えていきます。弊社の経験では、マジョリティにリーチするまでに1〜3年かかります。ここまで達成できると、ラガードも変革に参加せざるを得ない雰囲気が生まれ、強制的に参加することになります。

スモールスタート

では、どのように進めれば良いのでしょうか。弊社では「スモールスタート」という用語を使っています。小さな予算を活用し、最短で最大の効果を得ることを意味します。最初に必要なのは、「変革は話だけでなく、実際に可能である」というイメージを会社の皆さんに持たせることです。実績と信憑性が重要です。また、初めは上司から大きな予算をもらうことは難しいため、最低限のリソースで最短、最大の効果を積み重ねて実績を作る必要があります。これにより、2つの基準が確立されます。まず、フィジビリティ(実現可能性)が高く、次にコストが低いところを狙います。理想を言えば、大きな効果が出るところがさらに良いですが、この基準は優先順位としては比較的に低いです。

具体的な進め方

では、具体的に何をすれば良いのでしょうか。弊社の定義に戻ると、「課題を解決すること」が重要です。課題はすべてのイノベーションの種です。課題を解決することで、生活が多少便利になる場合もあれば、人類の生活パターンを変える(イノベーション)こともあります。最初は小さなことでも構いません。したがって、第1ステップは「課題の洗い出し」です。

これは社内から探す方法と社外から探す方法がありますが、実行段階で一番のハードルは「使ってくれるユーザーやお客さんを見つけること」です。ですので、使ってくれるユーザーやお客さんを実行段階で見つけに行かなくでも済むように、社内、または、既存のお客様でヒアリングやアイデーションを行い、社内の課題を探す方法をお勧めします。課題を洗い出し、フィジビリティとコストの面で優先順位をつけ、最初に狙うべき課題を1〜3つに絞ります。次の進め方は上記と同一ですが、異なる部分は、優先順位が「コストが低く、すぐ実績につながる」課題が高いことです。

次回は注意点に関して解説します。

「イノベーションサイクル・アプローチ」への1件のフィードバック

  1. ピンバック: イノベーション注意点 – Singularity Partners

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